2016年10月30日

「乙女文楽」を見る機会がありました



たまたま仕事の関係で「乙女文楽」を見る機会がありました。乙女文楽とは、文字通り女性だけで人形を使う文楽であり、大正時代に大阪で生まれた芸能です。話には聞いていましたが、現在でも技芸を継承している一座が複数残っていると知って驚きです。通常の文楽とはまったく異なる工夫があり、これはこれで非常に面白かった。

乙女文楽と通常の文楽の最大の違いは、人形遣いの方法です。文楽は3人で1体の人形を遣いますが、乙女文楽は1人の人形遣いが1体の人形を操る。そのために「腕金」など特殊な道具を使います。ちなみに乙女文楽は腕金を使いますが、別の一座では「胴金」という別の道具を使う。というのも腕金は発明されたときに実用新案登録されたそうで、別の流派では、やはり別の工夫が必要だったのです。このあたりも近代になってから生まれた芸能らしく、なかなか興味深いです。

さて舞台は「二人三番叟」と「傾城阿波鳴門」から「巡礼唄の段」でした。二人三番叟は、はたして1人で人形を遣えるか不思議に思って見ていたのですが、じつにうまい具合に人形を操作します。巡礼唄の段は、女義太夫の声質もせいもあってか、普通の文楽よりも妙に生々しく、現代人にはリアルに心情が伝わるようで、その哀感抑えがたいものがありましす。

乙女文楽一座の皆さんは、本業のかたわら修業を続け、老人施設などでのボランティア公演も継続的に行っているとか。こういった地味だけれども庶民の生活に密着した芸能は、ぜひとも生き残って欲しいと改めて感じました。

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